
テレビCMを制作する流れと各工程で押さえておくべきポイント
テレビCMを放映するには、CM素材の制作や放送局による審査、搬入に至るまでさまざまなプロセスを踏む必要があります。
企業PRや商品のプロモーションなどにおいてテレビCMの出稿を検討している方は、事前に必要な準備・手続きについて確認しておくことが欠かせません。
この記事では、広告会社や企業の広告宣伝担当者に向けて、テレビCMを制作する流れと各工程で押さえておきたいポイントを解説します。
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1.テレビCMを制作する流れ
テレビCMを放映するまでには、主に10の工程があります。スムーズに進行できるように、放映する目的やターゲットとする視聴者層、予算などをあらかじめ定めておくことが重要です。
➀オリエンテーション
テレビCMを制作する最初の工程となるのが、オリエンテーションです。
広告主・広告会社・制作会社の関係者間で打ち合わせを行い、制作の目的や方針、条件などを共有することで、その後の企画作成をスムーズに進められます。
オリエンテーションで共有する情報
- テレビCMの出稿目的
- テレビCMで得たい成果
- 訴求の対象(企業、商品・サービス、キャンペーン など)
- ターゲット層の属性
- 制作の予算やスケジュール など
なお、テレビCMには制作費だけでなく放映料が発生します。予算を策定するポイントについてはこちらの記事をご確認ください。
②企画の作成
オリエンテーションで共有した情報を基に、広告会社や制作会社がテレビCMのイメージを具体化させた企画を作成します。
企画の作成は、テレビCMを通して“誰に何を伝えたいのか”といった訴求軸を明確にして、クリエイティブ制作の方向性を決める重要な工程となります。
CMプランナーや制作ディレクター、コピーライターなどと打ち合わせを行い、広告主が複数の企画案のなかから採用する企画を選択します。
企画の作成時に確認するポイント
- ターゲット層に響くメッセージになっているか
- 訴求したい内容が正しく・分かりやすく伝わるか
- 独創性のあるテーマやストーリーで強いインパクトを与えられるか など
③絵コンテの制作
広告主が採用した企画を基に、CMプランナーや制作ディレクターが絵コンテを制作します。絵コンテは、テレビCMの映像を絵またはイラストで簡単に表した設計図のことです。
絵コンテの制作段階で決定しておくこと
- 各シーンのカット割り
- カットごとの秒数
- 音楽や効果音の内容・挿入タイミング
- ナレーションやセリフの内容 など
絵コンテは、撮影や映像制作に用いる台本のような役割があるため、テレビCMの完成形を具体的にイメージしやすいレベルまで落とし込むことが必要です。ブラッシュアップを繰り返しながら、広告主が採用する絵コンテを決定します。
内容によっては、この段階で放送局による考査を依頼します。
④キャスティング
テレビCMにタレントや俳優、スポーツ選手などを起用する場合は、キャスティングを行います。芸能事務所やキャスティング会社にオファーを行い、出演料の交渉や撮影スケジュールの調整を実施します。
起用する人物によってテレビCMの印象が変わるため、与えたいイメージや影響力などを考慮してキャストを選定することが重要です。
キャスティングを行うときに考慮するポイント
- 伝えたい世界観やイメージと人物の個性が合致しているか
- 商品・サービス内容との親和性があるか
- ターゲット層に近い属性のファンやフォロワーがいるか など
なお、人物を起用せずに静止画やアニメーションのみでテレビCMを制作する場合にはキャスティングは不要となります。
⑤撮影
撮影場所の選定や機材の準備、スタッフの選定などを行い、テレビCMを撮影します。BGMやナレーションを入れる場合は、同時期にスタジオでの収録を行います。
テレビCMの撮影方法には、主に3つの種類があります。
テレビCMの撮影方法
撮影方法 |
概要 |
ロケーション撮影 |
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ロケセット撮影 |
|
スタジオ撮影 |
|
屋外のロケーションで撮影する際は、悪天候で中止が必要になる可能性があるため、予備日を設定しておきます。なお、後日の撮り直しが発生しないように広告主が現場に同行することが一般的です。
⑥映像の編集
撮影した映像を編集してCM素材に仕上げます。仮編集を終えたあと広告主によるチェックを行い、本編集へと移行します。
仮編集と本編集で行うこと
行うこと |
|
仮編集 |
|
本編集 |
|
本編集に移行したあとは基本的に映像の修正対応はできないため、仮編集の段階でイメージの相違がないか確認しておくことが欠かせません。
⑦考査
テレビCMの素材が完成したら、放送局による考査を依頼します。
広告主の業態やCMの表現などについて、各種法令や業界の自主基準、日本民間放送連盟(以下、民放連)の放送基準を満たしているか放送局による審査が行われます。
考査の内容は、大きく2つに分けられます。
テレビCM考査の内容
内容 |
概要 |
業態考査 |
広告主の信用性や事業活動の健全性を確認する |
CM表現考査 |
CMの内容・表現が、関連法令、業界自主基準、民放連放送基準等に反していないか確認する |
放送局の考査に通らなかった場合はテレビCMを放映できないため、事前に関連法令に抵触していないか、業界の自主基準に反していないか、民放連の放送基準を満たしているかなどを確認しておくことが重要です。
なお、考査については絵コンテ段階や素材の完成前に行われることもあります。考査に必要な提出書類や審査される項目については、こちらの記事で詳しく解説しています。
⑧放送枠の決定
放送局による考査の依頼中に、テレビCMの放送枠を決定します。
各放送局が販売する放送枠は、出稿形態の種類によって異なります。出稿する目的やターゲットとする視聴者層を踏まえて選定することがポイントです。
テレビCMの出稿形態
出稿形態 |
概要 |
放送枠の決め方 |
タイムCM |
番組のスポンサーとなり、番組中のCM放送枠に放映する |
特定のレギュラー番組を指定する |
スポットCM |
番組の放送中または次の番組との合間に放映する |
平日・休日や時間帯の区分を指定する |
SAS(Smart Ad Sales) |
契約期間の定めがなく、1本単位で放映する |
番組・日時・本数を指定する |
なお、タイムCMは2クール(6ヶ月間)単位での契約になりますが、スポットCMでは放送期間をキャンペーンに合わせて柔軟に設定することが可能です。
各出稿形態の詳しい仕組みについては、こちらの記事をご確認ください。
⑨CM素材の搬入
考査に通過したあとは、放送局にCM素材を搬入します。民放連が規定するCM素材の搬入基準を基に各放送局でフォーマットが定められているため、事前に確認しておくことが重要です。
▼指定されている主な搬入基準
項目 |
搬入基準 |
|
素材 |
HD(高解像度)素材 |
|
映像記録方式 |
標準アスペクト比 |
16:9 |
デジタル記録方式 |
1080i |
|
音声記録方式 |
ステレオ、モノラル、5.1+S |
|
主な納品方法 |
XDCAMの郵送
オンラインでの送稿
|
|
素材名 |
全角30文字以内
始めに商品名の記載
JIS-X0208で定められる全角文字の使用 など
|
なお、搬入可能な媒体やオンラインでの納品可否については、各放送局で対応が異なることに注意が必要です。
CM素材の搬入基準についてはこちらの記事をご確認ください。
⑩放映
CM素材の搬入が完了すると、決定した放送枠でテレビCMが放映されます。
テレビCMが放映されたあとは、効果測定を実施して費用対効果を確認することがポイントです。得られた反響や課題を踏まえて出稿方法とクリエイティブを見直すことにより、テレビCMの費用対効果を引き上げられます。
なお、効果測定に役立つ指標についてはこちらの記事で解説しています。
2.テレビCMの制作から放映までにかかる期間
テレビCMの制作から放映までには、2~3ヶ月程度の期間がかかります。
実写での映像撮影やスタジオのセット制作などが必要になる場合には、制作期間がさらに長くなる可能性があります。
予定していたスケジュールでテレビCMを放映できるように、関係者間で密な情報共有と準備を行い、修正回数や撮影トラブルをできるだけなくすことが重要です。
3.まとめ
この記事では、テレビCMの制作について以下の内容を解説しました。
- テレビCMを制作する流れ
- 制作から放映までにかかる期間
テレビCMを放映するまでには、広告主と関係者が連携して一つひとつのプロセスを進行する必要があります。
なかでもオリエンテーションと企画の作成は、制作するテレビCMのイメージや方向性を統一する重要なプロセスとなります。広告主の要望に合ったテレビCMを完成させるために、綿密な打ち合わせを行うことが欠かせません。
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詳しくは、こちらの資料をご確認ください。